
サルビア/Risa Takeda
通り雨が過ぎて 全て灰になる前に
旅に出るの 遠くまで
両手に余るほどの傷
救い出して 愛は穏やかに
瓦解する 砂上の軌跡
声を聴いた あなたのそばで
終焉の言葉だけは知っていたの
悟られぬように
そっと糸で縫いつけた唇に仄かに香る
鮮やかに 煙る緋の色
指を伝い 薄れゆく意識
声を聴いた 今も あなたのそばで
凍りついているの
季節は過ぎ 冷えた歩道に
溺れてゆく 一人きりで
どうか歩き出せるように
合わせ鏡の向こうに微笑む顔
決して触れられない
はやく鼓動を止めて
崩れ去る 前に
救い出して 愛は穏やかに
瓦解する 砂上の軌跡
声を聴いた あなたのそばで
凍りついているの
故に ここに 愛はない
全て焼き尽くしてしまえ
この手には 赤いサルビア
断頭台の灯/Risa Takeda
失った光と名誉と引換に
この街の矛盾と嘘を教えてあげる
欲しかったものは全て手に入れたから
死神の逆鱗に触れてしまった それだけ
干からびたパンと葡萄酒とわずかな祈り
枯れ果てた眼に映るものは何もない
後ろの正面だあれ
鉄格子の窓から呼び止める気配に
懐かしさをおぼえ
賽を待つ 当てのない空の青さには
届かないから
足元に転がる 首
賽を待つ 当てのない空の青さには
届かないから
振り返ることもなく
進め
今は叶わない 正しさも願いも
心に秘めて
いつか変えてみせる
見届けて 私の行く末を
頭上には 鉄の頂が
おぼえていて 私の生き様を
街の灯が 滲んで一つになる
悲鳴と 拍手喝采を浴びて
魂を天に 託した
深海魚/Risa Takeda
突然に啼いた 風見鶏
時計の針は 意味を失くして 歪む
「景色が見たい」と
窓際に座った君は
魚になって泳ぐ 泡沫
夢は落ちる 姿を変え 今夜
新しく瞼を開ける
知らない他の誰かが言った
「この先には誰もいない」と
夢の続きは 明日の闇
迷い込む レプリカの水槽
いつか君に見せたい
最果ての朝 永遠に続く螺旋
夢は落ちる 姿を変え 今夜
新しく瞼を開ける
知らない他の誰かのように
虹色の空に いたずらに手を伸ばし
跡形もなく 消える